海外拠点でスマートオフィス化を進める上で検討すべき点の一つに、業務の見直しが挙げられます。紙を中心とした業務プロセスはスマートオフィスとの相性が悪く、スマートオフィス化の効果を十分に引き出すことができません。アナログからデジタルへ業務の見直しを行っていくことが有効です。
スマートオフィス化にあたり、具体的にどのような観点での業務見直しが必要なのでしょうか。本記事では、グローバルな環境でのスマートオフィス化における業務見直しの重要性と具体的な施策について紹介します。
海外拠点のスマートオフィス化に重要な業務見直しとは? ツールを活用したポイントを解説
海外拠点でスマートオフィス化を進める上で検討すべき点の一つに、業務の見直しが挙げられます。紙を中心とした業務プロセスはスマートオフィスとの相性が悪く、スマートオフィス化の効果を十分に引き出すことができません。アナログからデジタルへ業務の見直しを行っていくことが有効です。
スマートオフィス化にあたり、具体的にどのような観点での業務見直しが必要なのでしょうか。本記事では、グローバルな環境でのスマートオフィス化における業務見直しの重要性と具体的な施策について紹介します。
スマートオフィス化と併せて検討すべきことが、業務の見直しによる効率化です。なぜ、スマートオフィス化のタイミングで業務見直しを行うのが有効なのでしょうか。まずは、理由について解説します。
近年よく耳にするようになった「スマートオフィス」について、整理しておきます。スマートオフィスとは、IoTやAI、通信ネットワークなどのデジタル技術を活用して快適に働けるように、オフィスを整備する取り組みです。
デジタル技術の発達とともに、デジタル技術を利用することでオフィス環境を改善し、生産性や従業員満足度を高めていく取り組みが世界中で注目されるようになりました。コロナ禍によるテレワークの一般化など、働き方に変化が生じている点もスマートオフィスが注目されている理由の一つです。新しい時代の働き方を実現していくため、グローバルレベルでスマートオフィス化を実現する企業が増加しています。
スマートオフィス化にあたり、既存業務の見直しを行うことは、業務プロセスの改善、従業員間のコミュニケーションの促進などに有効です。業務のデジタル化は、データ活用やペーパレス化、リモートワークの推進など、多くのポテンシャルが秘められており、それらの機能を最大限に活かすためには、業務プロセスの見直しが必要です。
たとえば、スマートオフィス化の一環として固定席や固定電話を廃止する場合、従来の紙や電話を中心とした働き方では不都合が生じます。また、稟議書への押印を上司に依頼する際にも、スマートオフィスの導入により、上司がオフィスにいない可能性があります。
アナログな業務プロセスを維持したままオフィスのみをスマート化しても、アナログな業務が足かせとなり、その効果は制限されてしまうおそれがあります。業務プロセス自体もデジタル化を検討し、スマートオフィスのポテンシャルを最大限に活用するための調整が必要となります。
スマートオフィス化の一環として検討すべき業務見直しとして、まず取り組むべきは「ペーパレス化」です。なぜなら、フリーアドレスやテレワークなどを採用する際、紙の使用が障壁となりやすいからです。
たとえば、フリーアドレスを導入する際、従来の固定デスクと同じように個人ごとの文具や書類を配置することは難しく、利用者は常に同じ作業環境を維持するのが難しくなります。また、テレワークの場合、紙の文書はオフィスに出社しないと利用できません。
上記のような制約や課題に対処するために、押印からワークフローシステムへの移行や、紙での会議資料からタブレットを利用した電子化などの手段を通じて、紙をデジタルに移行する取り組みが必要です。これにより、場所・時間をとらわれない柔軟性が向上し、スマートオフィスの利点を活かすことができます。
ここでは、海外拠点におけるスマートオフィス化において具体的に有効となる業務見直しの例を紹介します。
デジタルワークフローは、コンピューター上で承認プロセスを実現するツールです。これにより、従来の紙とハンコで実施されていた承認プロセスを、デジタル化することが可能です。
また、テレワークなどの柔軟な働き方を実現する上で非常に有効です。PCやモバイルデバイスがあれば、どこでも承認プロセスを実行できるため、紙での押印プロセスに伴う「同じ場所で同時に行わなければならない」という制約を取り払うことができます。
デジタルワークフローを導入しないままテレワークを推進すると、押印のためだけにオフィスに出向かなければならないといった無駄が発生します。しかし、デジタルワークフローを利用することで、これらの無駄な出費や移動時間を削減し、上司・部下が場所に縛られず、柔軟に業務を行える環境を整えることができます。
デジタルワークフローと同様に、電子契約システムの導入もテレワークの実現やペーパレス化を促進する効果的なツールです。近年、電子契約システムの普及とともに、電子契約が商習慣として定着しつつあります。契約手続きを電子化することで、オフィスでの押印作業が不要となります。
電子契約は、単にペーパレス化だけでなく、以下のようなメリットもあります。
これらのメリットを通じて、電子契約は効率的な契約手続きの実現だけでなく、オフィス業務全体の合理化にもつながるため、積極的に導入を検討する価値があります。
スマートオフィス化は、会議室にTV会議システムを設置してオフィスと本社、海外の複数拠点をつなぎ、打ち合わせを行う際にも有効です。近年、グローバルレベルでオンラインミーティングツールの一般化が進んでいますが、重要な会議や頻度な拠点間の会議など、高品質のTV会議システムを導入することがすることが適切な場合もあります。
リモートと対面の要素を組み合わせた会議を実現するために、TV会議システムやミーティングツール以外にも様々なツールが役立ちます。たとえば、ファイル共有システムを用いた電子媒体での資料共有や、会議室内にタブレットを設置して会議資料をわかりやすく提示する取り組みも効果的です。
従業員のコミュニケーション基盤を整備することも重要です。スマートオフィス化により、従業員はオフィス内外で柔軟に勤務することができる一方、対面でコミュニケーションをとる機会は減少します。そのため、自由な場所でコミュニケーションを円滑に行えるようにする措置が必要です。たとえば、固定電話からスマートフォンへの移行や、チャットツールを通じて情報共有を行う取り組みが有効でしょう。
以下の図は、コミュニケーション手段を「人数」の軸と「リアルタイム性」の軸で整理したものです。リアルタイム性が重要な場合は、TV会議や電話が役立ちますが、同時にコミュニケーションをとる必要がない場合は、社内Wikiやプロジェクト管理ツール上でのコミュニケーションが有益です。コミュニケーション手段は状況に合わせて使い分ける必要があり、使い分けができるように多様な選択肢が用意されていることが重要です。
他社からの請求書や領収書、契約の申込書など、紙で受領するケースは多いと思います。こうした文書を電子化する手段として、AI-OCRの導入がおすすめです。AI-OCRは、AI技術を用いて高度に精緻化された光学文字認識(OCR)の一つであり、手書き文字を含む多様な文字を高い精度で読み取ることができます。
最近国内においては、電子帳簿保存法の改正により、法的に保管が求められる請求書や領収書なども、一定の要件を満たせば、スキャン保存が可能になりました。国によって法的要件や進行度は異なりますが、欧米諸国やシンガポール、インドネシアなど東南アジアでは電子化が進んでいます。こうした文書の電子化には以下のようなメリットがあり、検討する価値がある施策の一つといえるでしょう。
近年、高い注目を集めている生成AIは、業務効率化に活用できるツールの一つです。生成AIは、大規模言語モデル(LLM)により事前に学習した知識のほかに、外部から新たに与えた知識を基に回答を生成できる能力をもっています。この手法は「グラウンディング」として呼ばれ、様々な活用方法が模索されています。
たとえば、生成AIを活用した社内情報検索がその一例です。グラウンディングにより、生成AIに社内Wikiや規程などをインプットさせ、入力された質問に対して社内情報をもとにした適切な回答を生成させることができます。
スマートオフィス化により紙資料が減り電子化が進むと、情報の検索精度の向上が求められるようになります。生成AIを活用することで、電子化された社内情報を含めてチャット形式で質問を行えるシステムを構築することも可能です。
その他にも、オフィス内にIoT機器などのセンサーを設置することで、オフィス環境を改善するための取り組みも有効です。たとえば、IoT化した人感センサーを活用することにで、照明や空調の電力のオン・オフを非接触で制御できます。また、デスクや会議室などオフィス利用状況を可視化し、その情報をもとに利用方法を最適化することができます。さらに、顔認証と体温測定を組み合わせたソリューションや、スマートフォンや音声認識による非接触の制御なども有効です。このようなセンサー技術を導入することで、オフィス環境の効率性を向上させ、従業員や来訪者の快適さや安全性を確保できます。
上述したようなツール活用による業務見直しにおいて注意すべき観点を、ここでは紹介します。
業務効率化を実現するために導入する各種ツールは、使用するにあたり一定のITスキルやITリテラシーが求められる場合もあります。たとえば、電子契約システムを利用する際は、電子署名の設定操作などを理解する必要があります。従業員によっては、ツールを十分に使いこなすことが難しいケースもあるでしょう。
こうした状況への対策として、以下の点が考えられます。
業務に不可欠なツール、たとえばワークフローや電子契約システムなどに関しては、従業員は必ずそれらを利用することになります。よって、利用方法を理解してもらう取り組みが重要です。上述した①マニュアル整備や②ヘルプデスクの設置が有効となります。一方で、業務に必須ではないが有益なツール、たとえば生成AIなどの導入においては、そもそもツールの有用性を理解してもらうところから始める必要があります。具体的には、組織にツールの専門家である③導入リーダーを置くことが、スキル向上やツール浸透に役立つでしょう。
業務を効率化するためのツールにも、当然ながらコストが発生します。業務効率化の度合いが高くても、高額なコストがかかる場合、収支がマイナスになるおそれがあります。
そのため、ツール導入の際にはIRR(内部収益率)やNPV(正味現在価値)などの評価手法を用いて投資対効果を評価することが必要です。また、導入後もツールが適切に利用されているか、利用されていない無駄なツールはないかを確認するために、定期的な見直しも必要となるでしょう。
海外拠点においては、クラウド型のサービスを採用することで、少ない初期投資で導入し、必要であればコストをかけず撤退することも可能です。ツール利用開始時には、利用終了がしやすいかどうかも検討し、考慮しておくことをおすすめします。
スマートオフィス化に伴い注意すべき点の一つは、セキュリティです。従業員が柔軟な働き方を実現できる一方で、情報漏えいのリスクやオフィス内への不正侵入に気づきにくいリスクなどが増加します。また、セキュリティに高い基準や規制を設けている国がある反面、一部の国では緩やかな基準が適用されているため、スマートオフィス化を進める際には、各国の法規制を満たすだけでは不十分な場合があります。セキュリティ意識が低い国では、サイバー攻撃やハッキングの標的とされやすい傾向があるため、セキュリティリスクに対する適切な対策も考えなければなりません。
スマートオフィス化に伴って導入されるツールにおいても、情報漏えいや不正アクセスのリスクが発生します。ツールの導入時には、十分なセキュリティ対策を講じる必要があります。
一つの選択肢として、SaaS(Software as a Service)など、自社でのセキュリティ対策が不要なツールを採用することが挙げられます。自社でセキュリティ対策に掛けられるリソースが限られている場合、SaaSの採用は有益な選択肢となるでしょう。また、自社内にセキュリティに関する対応ができない場合、専門的な知見を持つ企業に相談することも有効です。
さらに、SaaSを利用する際にも以下のセキュリティリスクに対策する必要があります。
この記事では、海外拠点におけるスマートオフィス化において実施すべき業務見直しについて解説しました。
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